前回からのつづき
韓国に入る前から腰を痛め、思うように漕ぐことができなくて悩んでいた一人の選手がいました。彼は日頃から身体に対する意識が高く、身体のコンディショニ ングをとても念入りに行っているベテラン選手なのですが、チームへの責任感も人一倍強く感じる人間ですから、世界選手権、全日本選手権とハードなレースが 続いた中で、違和感を感じながらもちょっと無理をしすぎた様子でした。韓国入りしてからは毎日、彼の身体の状態をみて、いろいろ話し合いながらコンディ ショニングを進めていきました。焦る気持ちからか、少し無理して症状がぶり返した日もありましたが、徐々に回復し、決勝では本当に見事なレースを見せメダ ルを獲得してくれました。そのゴールの瞬間を目にして、嬉しさのあまり、自分も思わず感極まってしまいました。
彼は表彰式の直後、真っ先に自分のところに来てメダルを首にかけてくれました。トレーナーとしては、とてもうれしい瞬間でした。
大会終了後、この選手から以下のメールをいただき、彼の謙虚な姿勢と心遣いに再び感動させられました。
『青木さんには本当にお世話になりました。
今大会を通して自己管理の甘さを痛感しました。
よく「自分の体のことは、自分が一番よく分かっている」
なんて言いますが、実際には、
「○○が張っている」「○○すると痛い」等といったレベルの話で本当には分かってなんかいない気がします。
青木さんをはじめ他のトレーナーの方とお話すると、いつも自分の体について「発見」をします。
もしかするとその対話は自分の体との対話なのかもしれませんね。
施術中はメンテナンス以外にいろいろと教えて頂きありがとうございました。』
トレーナーという業務は、選手とともに喜び、悲しみ、悔しさなどを共有する中で、大きな感動と自らの成長を実感できます。本当にやりがいがあります。ただ、「選手の身体を診る」ということは選手以上に身体のこと、障害のことを学んでおかなければなりません。授業の中では、このような経験を通して、トレーナーを目指している学生の皆さんに、身につけたい知識・技術をわかりやすくお伝えしたいと考えています。
選手たちはもうすでに来シーズンに向けて始動しています。さらなるパフォーマンス向上のため、今日もハードな練習に耐え頑張っています。思う存分、力を発揮してもらえるよう今後もしっかりサポートしていきたいと思います。 みなさん、ボート競技の応援、よろしくお願いいたします。 最後まで読んでいただきありがとうございました。
(青木)