ようこそ、ここへ、クックックックッ。古い、ジュンコちゃーん。学生が見たらさめるな、たぶん、となりのデスクの竹中事務長しかわからんな。し、失礼。やっちもうた。先週はスーパービジーでリリースできなかった。ヤジオファンにはかたじけない。
ワオー、グレイト、パーフェクト。マイフレンド、カリフォルニア州立大学教授のジムのリアクションからスタート。めげずにいくぞ。
さて、またあやしいタイトルが書かれている。冬がくる、ヤジオの冬の想い出はなぜか暗い。
実は誰も知りえない過去がある、大学時代の友人、タケちゃんが登場する。幼なじみの魚釣りのタケちゃんじゃあない。ややこしくなるから次回からはタケちゃんツーと言おう。
ヤジオは京都金閣寺の近くにある大学の経営学部を出た。タケちゃんは広島出身、文学部。同じ下宿屋の隣部屋だ。
二人の胸にしまった想い出がある。1回生の中頃、タケちゃんに彼女ができた。(ヤジオとタケちゃんだけの暗号で、彼女のことを、デデ、という、理由があるが、エロ。省略)地元出身、産業社会学部だ。
タケちゃんは彼女との出来事を毎日ヤジオに話をしてくれた。二人で夜な夜なビール片手に会話も弾んだ。タケちゃんはデデを本当に愛していた、好きだった。人生、サイコーの時期、すばらしい大学生活が続いた。
しかし12月にふられた。以降、講義が終わったらすぐ帰る。笑顔も会話もなく、ふさぐ日々が続いた。
ヤジオはドライブにいこうと誘った。
タケちゃんの感傷旅行だ。誰にも話したことがないが、二十年の時効はすぎた、ヤジオファンのためにここに明かそう。
1月中旬、鉛色の北陸の空、荒れ狂う日本海、二人はルート1号で京都から草津へ、そして北陸へ迎う8号に移り、敦賀から越前海岸を走る。運転手はヤジオ。ほとんど会話を口にせず、タケちゃんは外を眺めていた。
安宅の関を過ぎ、金沢入り。近江町市場で飯を食って、能登千里浜海岸、そしてヤセの断崖へ。
もうお分りだろう、先週、映画公開された、松本清張の不朽の名作、『ゼロの焦点』最後の舞台だ。大学当時、ヤジオとタケちゃんはこの小説に感動して、いつかいこうと約束してた。
二人は断崖の上に立って話をした。タケちゃんが言った。禎子や室田氏の思いがわかるような気がする。(あまり書くとこれから読む人にしかられるのでやめます、映画じゃなく是非読んで下さい)自然に会話が出てきた。タケちゃんは吹っ切れた。
大学の親友、タケちゃんとの冬の想い出。こんな経験があるから、今のヤジオがいる。
毎年12月にタケちゃんと京都で会う。今年も約束をした。ゼロの焦点が公開された今年、二人の会話にはきっと、デデがいる。